- やろうと思っていることが中々行動に移せない…
- 仕事を頼まれたのに、何から始めて良いか途方に暮れている…
- やるべきことが一杯で、頭がパンクしそう…
こういった状況、皆さんも経験したことがあるのではないでしょうか?
抱えている仕事を把握するためにタスクを書き出しても、中々実行に落とし込めないことがあります。
その原因の一つとして、タスクの粒度が大きすぎることがあります。
関連動画
今回の「タスクの分解」については、YouTubeチャンネルにて、チームタスクペディアの小鳥遊が動画でも解説しています。
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行動は手順でできている
私たちの行動は、さまざまなプロセス(手順)から成り立っています。
例えば、私たちが日常的に行っている「歯を磨く」という行動一つをとっても、
- 歯ブラシを手に持つ
- 水道の蛇口をひねる
- 毛先を濡らす
- 歯磨き粉の蓋を取る
- 歯磨き粉を付ける
- 歯を磨く
という複数の手順で行なわれています。
仕事も同様です。
普段は意識することはありませんが、あらゆる行動はよくよく考えれば「いくつかの手順」に分けることができます。
行動主義心理学では、「手順が無意識の内に連なること」を「行動連鎖(Behavior Chain)」と呼びます。
また、「複数の手順から成る行動を、いくつかの行動要素に分けること」を「課題分析(Task Analysis)」と呼ばれます。
この手順一つ一つを、私たちは普段、連鎖的に行っています。
この手順をきちんと把握できていれば、行動が完遂する確率は高まります。
逆にいえば「行動できない」「うまくできない」ということは、「行動が完遂されるまでの手順を把握できていない」ということが要因の一つと考えられます。
課題を与えられても結果を出せない人の多くは、解決までのプロセスでするべき仕事の中身と量を把握できず、段取りができない。そのせいで、するべき仕事の量を過小評価している。
─行動分析学入門 ヒトの行動の思いがけない理由
「行動(仕事)は手順でできている」ということの理解が、まずは出発点になります。
「最初の第一歩」に目を向ける
「象一頭を食べるにはどうすればいいか?」という昔ながらの問題をあなたも知っているだろう。
答えは、「ひと口ずつ食べる!」だ。(中略)
つまり、いくつかの段階に分け、最初のものからとりかかればいいのだ。
─カエルを食べてしまえ!
あらゆる行動は、いくつかの手順に分解できます。
そして、その行動を確実に実行するためには、その一歩目に視点を合わせる必要があります。
「ストレスフリーの仕事術」 GTD®では、頭の中にある「気になること」を見極めた際の、自分が取れる最初の一歩目を「次にとるべき行動(ネクストアクション)」と呼んでいます。
GTDの核となるのが、「次にとるべき行動」である。
これは「気になること」を完了させるための具体的な行動をまとめたものだ。
先に述べたように、それらは必ず具体的かつ物理的な行為でなければならない。
─全面改訂版 はじめてのGTD ストレスフリーの整理術
次にとるべき行動(ネクストアクション)は、行動を手順に分解した時の、最初の一歩です。
中々先に進まないタスクや、何から始めて良いか分からないプロジェクトは、まずは、この「次にとるべき行動」を明確にする必要があります。
「次にとるべき行動」は「自分にとって即座に実行できる単位の行動」です。
タスクを実行できる単位に分解できるかどうかは、実際に行動に移せるかどうかを決める要因の一つになります。
プロジェクトを小さな単位に分解することは非常に重要です。それによってタスクに取り組む気力がわき上がることもあれば、急速にしぼんでしまうこともあるほどです。タスクに取り組む気力がわくかどうかは、タスクの分解の仕方にかかってくると言っても言い過ぎではありません。
では実際にどうすればいいかといえば、難しくはありません。タスクを見て即座に実行できるかどうかが基準です。できるならそれ以上分解する必要はありません。できないなら分解する必要があるのです。─クラウド時代のタスク管理の技術
ひばちです。 今回はタスク管理用語「次に取るべき具体的行動」について説明します! [afTag id=3846] 次に取るべき具体的行動とは 「次に取るべき具体的行動(Next Action)」とは、「頭の中の『[…]
「何をするか」に目を向ける
「何をするか」に目を向ける効果に関連するものとして、リーベルマンの実験があります。
リーベルマンらは、大学生に、簡単なアンケートに回答し、結果を三週間以内に電子メールで送るという仕事を依頼しました。(中略)
実験前には、被験者が「なぜ」または「何」のどちらかの思考に意識を向けるよう、意図的な課題を与えます。(中略)
その結果、「何」の思考を奨励されたグループは、「なぜ」のグループよりも平均で約十日も早くメールを送信しました。
─やってのける~意志力を使わずに自分を動かす~
この実験で分かることは、「何をすべきか」を意識すると、人はタスクに着手しやすくなるということです。
逆に「なぜやるのか」という理由を考え過ぎているとと、中々実行に移せないのです。
特に、着手しづらい難しいタスクについては、意識的に「まず何をするのか」を考えることが重要です。
行動に移せないのは、性格や才能、能力などが要因なのではなく、単に「次にとるべき行動」が明らかでないからである可能性があります。
タスク分解の2つの方法
「タスクやプロジェクトを実行できる単位まで分けること」を「分解(チャンクダウン、ブレイクダウン)」と呼びます。
分解の方法は大きく分けて2つあります。
「手順化すること」と「ネクストアクションのみを決めること(明確化)」です。
手順化する
手順化は、タスクが完遂されるまでの行動を書き出す方法です。
プロジェクトマネジメントでは、「アクティビティへの要素分解」と呼ばれます。
要素分解とは、プロジェクト・スコープやプロジェクト成果物を、より小さくマネジメントしやすい要素に分割したり再分割したりする技法である。
─プロジェクトマネジメント知識体系ガイド PMBOKガイド 第6版
例えば、「議事録を作成する」というタスクの場合は、
議事録作成
- フォーマットを上司に確認する
- 前回の作成担当者に議事録データを依頼する
- 会議中に取ったメモを確認する
- 内容を打ち込む
- 上司に確認する
- 社内に配布する
という風に、実行可能な単位の手順に分けていきます。
この方法は、ある程度長期的に見通しを立てたい場合、納期や締切を意識したい場合に有効な手段です。
ネクストアクションの明確化
一方、「ネクストアクションの明確化」は、完了までの手順ではなく、あくまで「最初の一歩の行動」だけを明らかにする方法です。
「議事録を作成する」タスクの場合は、
議事録作成
- フォーマットを上司に確認する
という風に、最初のアクションだけを決めます。
「そのアクションを実行し終えたら、また更に次のアクションを決める」といった方式となります。
議事録作成
✔ フォーマットを上司に確認する
- 前回の作成担当者に議事録データを依頼する
こちらは、熟練度が低く、見通しが立ちづらいタスクに有効な手段となります。
手順化もネクストアクション化も、最終的には同様の結果になります。
手順化を行っても、結局は最初の一歩に目を向け続けることは変わりませんし、ネクストアクションの定義も、順当に進めていけば「手順」が残ります。
共通して重要なのは、ネクストアクションとして定義した一歩目の手順が「実行できる適切な単位になっているか」どいう部分ということになります。
適切なネクストアクション
ここまで、タスクを手順として考え、ネクストアクションを明確にすることの大切さをお話ししてきました。
とは言え、タスクの分解は、思ったよりも奥が深い作業です。
明らかにしたネクストアクションが本当に適切なものでなければ、行動に繋がらないからです。
ここでは、タスクを分解する上で、重要な3点をお伝えしていきます。
本当にすぐ実行できる形にする
適切なネクストアクションの定義は、要するに「実行できる単位かどうか」です。
加えて、タスクの分解の目安となる時間を決めておくと、適切なネクストアクションが設定しやすくなります。
私たちの集中力は、長時間続く訳ではありません。
タスクの適切な所要時間の単位は明確に決まっていませんが、「30分前後」を一つの単位にすると良いとされています。
例えば人はどのくらい長く注意を集中できるのかを調べた「クロックテスト」という実験があります。2時間、時計のような実験装置を見つめ、針が2秒分ジャンプするのを見つけると手元のスイッチを押す、というものです。30分くらい経つと見落としが急に増えます。これを注意の“30分効果”と言います。この理由は疲れではなく、同じことをしていると飽きてくる「心理的飽和状態」に陥るからです。─夢ナビ 大阪大学 人間科学部
実行できなかった時は再度分解する
一度の分解で、適切なネクストアクションになるとは限りません。
『実際にやろうと思ったら、やっぱり何となく気が重い…』
そういう感情が起こる時は、再度「最初の一歩」を考える必要があるかも知れません。
この時、注意することは「遠ざかり過ぎない」ことです。
仕事に取り組む前に、「机を綺麗にする」「書類を整理整頓する」等をネクストアクションに設定し続けると、かえって本来のタスクから遠ざかってしまうことになります。
「ハードルを下げて、かつ遠ざかり過ぎず」が適切なネクストアクションの設定となります。
本質を捉える
実は「完遂まで手順に分解できる」ということは、要するに「ある程度熟練している」ということを意味しています。
また、「適切なネクストアクションを定義できる」ということも、そのタスクにある程度精通しているということを意味します。
「次の一歩」が中々見つからなかったり、手順が全く思い浮かばない場合には、熟練している人や、専門家の本に目を通してみるのも一つの方法です。
例えば、「文章を書く」というタスクの、最初のプロセスは「書き始めること」ではありません。
「テーマや、文章に必要なパーツ(内容)を集めること」から始まります。
しかし、経験の少ない人が文章を書こうとすると「まず書き始める」ことから始め、結局うまく作業が進まない場合があります。
「取り組もうとしているタスクの本質を捉える」「その為には精通した人に聞いてみる」というのも、適切なネクストアクションを決める上で、重要な一歩になります。
ネクストアクションの分類
タスクを分解した際の適切なネクストアクションには、幾つかの共通点があります。
かなり古い書籍になりますが、1992年に出版された「知的生産性向上システムDIPS」には、タスクブレイクダウンの要素として「HIROEN」が紹介されていました。
HEAR:誰かに聞いておくべきことはないか?
INFORM:誰かに伝えておくべきことはないか?
REQUEST:誰かに依頼しておかねばならないことはないか?
OPERATE:自分自身で実施すべきことはないか?
EXAMINE:調査・検討を要することはないか?
NEGOTIATE:誰かと交渉すべきことはないか?
─知的生産性向上システムDIPS
これらの6つの視点でタスクを分解していくのはとても有用です。
考えてみると、適切なネクストアクションとは、ごくごく小さい一歩であることが肝であることが分かります。
これらの視点を加味しつつ、経験上「適切なネクストアクションになりやすい、小さい一歩(MITE)」として、4つの項目を挙げてみます。
1. 思考の整理(Mind)
「○○について書き出してみる」
「△△について、今できることを整理する」
2. 情報の収集(Information)
「○○についての情報を集める」
「△△さんに確認する、聞いておく」
3. 試行実験(Try)
「○○を試しにやってみる」
「△△を仮で作ってみる」
4. 環境の整備(Environment)
「○○をするための準備を行う、用意する」
「××さんに言伝しておく、依頼しておく」
まとめ
タスクを書き出した後は、そのタスクを実行できる形に分解する必要があります。
その分解の精度が、タスクを実行できるか否かを決める大きな要因になります。
手順化するのも、ネクストアクションを明確にするのも、本質は変わりません。
「最初の一歩を踏み出しやすくする」ということが、分解の肝になります。
「抱えている仕事」「依頼されたタスク」「思い付いたやりたいこと」について、「次にとるべき一歩目の行動」に目を向けることは、非常に重要な習慣になります。
タスク管理を通じて「次にとるべき行動は何だろう?」と考える習慣を身に付けていきましょう。
私は「次にとるべき行動」を考える習慣を世界的に広めるのが自分の使命だと考えている。会議や話し合いで、行動が必要かどうかの判断が必ずなされ、必要な場合にはその行動が特定される、あるいは少なくとも誰が責任を負うかが明らかになることが当たり前になればいいと思っている。
─デビッド・アレン
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